「原発より自然エネルギーの方が好きかな」という人向け読書案内 |
そんなことから震災以来、原発や自然エネルギーに関する本をいろいろと読んだ。といっても一般書ばかりだが・・・。夏休みの推薦図書として紹介するには少々遅すぎるが、半年前の私のような中途半端な「嫌原発」派には、少しは頭を整理し気持ちに踏ん切りをつけるのに役立つのではと思うので、紹介してみたい。
まず、踏ん切りのつかない人(またはついたばかりの人)は、原発の危険に警鐘を鳴らし脱原発に向けて粉骨してきた賢人の言葉に謙虚に耳を傾けよう。たとえば、京都大学の「最下層の助教」(本人がそう言っている)である小出裕章さんが書いた『原発のウソ』(扶桑社)、『原発はいらない』(幻冬舎)。あれだけ全国各地の反原発運動に支えてきた人であるにもかかわらず、福島原発事故のあと人災の発生を止められなかったと、原子力研究者として自責の念を語っていることに頭が下がる。
もう一人は高木仁三郎さん。2000年に亡くなったが、それまで原子力資料情報室の代表として全国の反原発運動の精神的支柱になってきた人だ。高木さんの本では、『原発事故はなぜくりかえすのか』、『市民科学者として生きる』(二冊とも岩波新書)。エスペランチストには高木さんの本は必読。高木さんはsamideano(エスペランチストの同志)だ。
人間と原子力は共存できないと思い知らされるのが、東海村臨界事故を扱った『朽ちていった命——被曝治療83日間の記録』(新潮文庫)。被曝による病状の進行があまりに悲惨で、読み続けるのがつらくなる。それと、ウランが臨界状態に達したときに瞬間的に発生する「チェレンコフの光」が、神の怒りの一撃のようで不気味だ。東海村臨界事故は放射線急性障害の話だが、『チェルノブイリ診療記』(菅谷昭著、新潮文庫)は甲状腺癌などの長期障害を扱った本。甲状腺異常で外科手術を受ける子どもたちの姿が痛々しい。
「それはこころの問題です」と、欲にくらんだ私たちを見透かしたような題名の一文が含まれたエッセイ集、『いのちと放射能』(柳澤桂子著、ちくま文庫)も必読書。刹那の快適のために、いのちをないがしろにしてはならないというシンプルだが強烈なメッセージに胸をえぐられる。
自然エネルギーへの転換については、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也・所長が関わった本がおもしろい。たとえば『原発社会からの離脱』(講談社現代新書)、『今こそ、エネルギーシフト』(岩波ブックレット)。他にも、『グリーン・エコノミー』(吉田文和著、中公新書)、『原発に頼らない社会へ』(田中優著、ランダムハウスジャパン)。
深くうなずいたのは、「脱原発」「脱原発依存」「縮原発」——どんな言葉を使っても、原発から距離をとるエネルギー政策に向かうことは、それ自体が社会システムを変革する試みに直結するということ。分散型エネルギーを推進することは、エネルギーの地産地消をすすめるということであり、それは地域における雇用を生み出し、結果としてエネルギーの海外依存を減らし、一方で自然エネルギー技術の革新を促し、これを輸出産業に育てることによって、日本経済の「新成長」を導いていくことになる。
日本経済は「失われた20年」の中で呻吟し続けてきたが、エネルギー・シフトをうまく組み立てれば、そこから脱出できる解を手にすることができるかもしれない。
『グリーン・エコノミー』の中に、こんな言葉が紹介されていた。「制約なくして革新なし(Limitation creates innovation. / Limigo kreas novigon.)」、「対話がインスピレーションを生む(Dialogue creates inspiration. / Dialogo kreas inspiron.)」