2007年 02月 10日
アップリフターNo.4 |
You are my adversary, but you are not my enemy.
実はコマーシャルの一節です。いまから5~6年前に、さかんにCNNチャンネルで流れていました。スポンサーは国際オリンピック委員会(IOC)。全文はこうです。
“You are my adversary, but you are not my enemy. For your resistance gives me strength. Your will gives me courage. Your spirit ennobles me.”
“And though I aim to defeat you, should I win, I will not humiliate you. Instead I will honour you. For without you, I will be a lesser man.”
「君は私のライバル、でも敵ではない。君の忍耐、それが私に力を、君の意志、それが私に勇気を、君の気迫、それが私に気高さを授けてくれるから」
「そして、君を打ち破ることに力を尽くし、たとえ勝つことができたとしても、私は君を辱めはしない。むしろ、君を讃えたい。君がいなければ、私は小さな存在にすぎないから」
詩というほどのものでもないかもしれません。しかし、このコマーシャルを見たとき、妙に言葉が頭の中に残りました。その一つの理由は英文がリズミカルだからでしょう。それと文章が簡単でわかりやすいというのも、もう一つの理由です。日本のCNNチャンネルで見られたということは、世界中のCNNネットワークで流されたということです。英語を母語としない視聴者にも分かりやすくインパクトのあるものをねらって、作者はこういう「詩」をつくったのではないでしょうか。
きれいごとすぎるかもしれません。所詮スポーツの世界のことかもしれません。ただ、このコマーシャルを見た世界中の多くの人たちが、「どの国・民族・宗教もお互いにライバルとしてつき合い、敵として接することをしなければ、どれほど平和な世界になることか」と夢見たはずです。また、「失敗した者が辱められるのではなく、讃えられ再起をめざすことができれば、どれほど活力ある社会になることか」と思い描いたはずです。
“adversary”という単語は、「敵」と訳されることもありますが、もともとは「反対の」「反対方向に」という意味の単語からつくられたものです。ですから、「敵」以外に、「当事者」という意味があります。たとえば、日本の裁判制度のように、原告と被告が対峙してそれぞれの主張を交わし、その正否を裁判官が判断するやり方を”adversary system”(当事者主義、対審主義)と呼びます。こここから類推できるように、”adversary”には能力を競い合う相手という意味があるのです。「ライバル」との訳が当てられているのはそのためです。
一方、“enemy”はラテン語で「~ではない」という意味の”en-”と、同じく「友だち」を指すラテン語”emy”の合成語です。「友だちではない」、つまり「敵」という意味になります。
敵ではなく、よきライバルとしての関係を築くことは個人レベルでもそう簡単ではありません。国レベルではなおさらです。
たとえば日中関係。日本では、高度成長を続ける中国を目の当たりにして、間歇的に中国脅威論が吹き出します。これなど、世界ランキング第2位(2005年GDP)につけるトップ・アスリートが、世界第4位(同上)にまで駆け上がってきた若手アスリートをやっかんでいるようなものです。
みっともない振る舞いです。中国の成功を讃え、中国の挑戦をバネにさらに得意分野に磨きをかける気迫を示すことこそ、よきライバルとしての振る舞いではないでしょうか。むろん、同じことは中国にも言えます。当座の経済的成功に慢心して、国内外への配慮を欠けば、容易に足下をすくわれるでしょう。
ところで、冒頭の英文の最後にある”lesser man”には、「小さな存在」という訳を当てました。ただ、最初この英語を聞いたとき、私が思いついたのは「小人(しょうじん)」でした。「徳・器量のない人」(広辞苑)のことです。では、「大人(たいじん)」は“greater man”? これでは、なんかスーパーマンのような響きが・・・・・・。ここは、比較級にせず、”great man”のままでよさそうです。
実はコマーシャルの一節です。いまから5~6年前に、さかんにCNNチャンネルで流れていました。スポンサーは国際オリンピック委員会(IOC)。全文はこうです。
“You are my adversary, but you are not my enemy. For your resistance gives me strength. Your will gives me courage. Your spirit ennobles me.”
“And though I aim to defeat you, should I win, I will not humiliate you. Instead I will honour you. For without you, I will be a lesser man.”
「君は私のライバル、でも敵ではない。君の忍耐、それが私に力を、君の意志、それが私に勇気を、君の気迫、それが私に気高さを授けてくれるから」
「そして、君を打ち破ることに力を尽くし、たとえ勝つことができたとしても、私は君を辱めはしない。むしろ、君を讃えたい。君がいなければ、私は小さな存在にすぎないから」
詩というほどのものでもないかもしれません。しかし、このコマーシャルを見たとき、妙に言葉が頭の中に残りました。その一つの理由は英文がリズミカルだからでしょう。それと文章が簡単でわかりやすいというのも、もう一つの理由です。日本のCNNチャンネルで見られたということは、世界中のCNNネットワークで流されたということです。英語を母語としない視聴者にも分かりやすくインパクトのあるものをねらって、作者はこういう「詩」をつくったのではないでしょうか。
きれいごとすぎるかもしれません。所詮スポーツの世界のことかもしれません。ただ、このコマーシャルを見た世界中の多くの人たちが、「どの国・民族・宗教もお互いにライバルとしてつき合い、敵として接することをしなければ、どれほど平和な世界になることか」と夢見たはずです。また、「失敗した者が辱められるのではなく、讃えられ再起をめざすことができれば、どれほど活力ある社会になることか」と思い描いたはずです。
“adversary”という単語は、「敵」と訳されることもありますが、もともとは「反対の」「反対方向に」という意味の単語からつくられたものです。ですから、「敵」以外に、「当事者」という意味があります。たとえば、日本の裁判制度のように、原告と被告が対峙してそれぞれの主張を交わし、その正否を裁判官が判断するやり方を”adversary system”(当事者主義、対審主義)と呼びます。こここから類推できるように、”adversary”には能力を競い合う相手という意味があるのです。「ライバル」との訳が当てられているのはそのためです。
一方、“enemy”はラテン語で「~ではない」という意味の”en-”と、同じく「友だち」を指すラテン語”emy”の合成語です。「友だちではない」、つまり「敵」という意味になります。
敵ではなく、よきライバルとしての関係を築くことは個人レベルでもそう簡単ではありません。国レベルではなおさらです。
たとえば日中関係。日本では、高度成長を続ける中国を目の当たりにして、間歇的に中国脅威論が吹き出します。これなど、世界ランキング第2位(2005年GDP)につけるトップ・アスリートが、世界第4位(同上)にまで駆け上がってきた若手アスリートをやっかんでいるようなものです。
みっともない振る舞いです。中国の成功を讃え、中国の挑戦をバネにさらに得意分野に磨きをかける気迫を示すことこそ、よきライバルとしての振る舞いではないでしょうか。むろん、同じことは中国にも言えます。当座の経済的成功に慢心して、国内外への配慮を欠けば、容易に足下をすくわれるでしょう。
ところで、冒頭の英文の最後にある”lesser man”には、「小さな存在」という訳を当てました。ただ、最初この英語を聞いたとき、私が思いついたのは「小人(しょうじん)」でした。「徳・器量のない人」(広辞苑)のことです。では、「大人(たいじん)」は“greater man”? これでは、なんかスーパーマンのような響きが・・・・・・。ここは、比較級にせず、”great man”のままでよさそうです。
by homaranisto
| 2007-02-10 21:00
| アップリフター/Uplifters