2008年 01月 18日
世界はあなたのカキ? |
とある会社の社内会議の通訳をしていたときのこと。その会社は外国の会社と合併したため、今後人事政策も変わることから、中堅幹部を集めてイギリス人の役員が人材運用について話をした。長く年功序列でやってきた日本人社員には、業績別賃金制度への移行は気にかかるところ。会場からその役員に質問が出た――「会社に入って15年。これからも私にもチャンスがあるでしょうか」。
イギリス人役員はその社員を励まそうと思ったのだろう。いつもゆっくりとクリアに日本人にわかりやすく話をしてくれるその役員は、こう言った。
“The world is your oyster. If you are in the thirties, you have a full of opportunities.” 同時通訳だったので、oysterのところで思考が止まり口が固まった。「牡蠣(oyster)」と「人事政策」との関係を、その瞬間、必死で探ったが、理解できるわけもなく、結局そこは素っ飛ばして後半部分だけを訳した。
同僚に交代してブースから出てからも「カキ」のことが頭から離れず電子辞書でいろいろと探し回った。ありました! 出典はシェークスピア。「ウィンザーの陽気な女房たち」(The Merry Wives of Windsor)に出てくるらしい。oysterはあの食用の「カキ」ではなく真珠がとれるアコヤガイのこと。「世界はあなたのアコヤガイ」とは、「世界はあなたの思い通りになる」という意味らしい。これで、その役員が言った後半の「30歳代であれば、チャンスはいっぱいある」とつながった。くだんの日本人に、その役員は精一杯の励ましの言葉を贈ったのに、通訳者が台無しにしてしまった。
イギリス人とシェークスピアは要注意。
イギリス人役員はその社員を励まそうと思ったのだろう。いつもゆっくりとクリアに日本人にわかりやすく話をしてくれるその役員は、こう言った。
“The world is your oyster. If you are in the thirties, you have a full of opportunities.” 同時通訳だったので、oysterのところで思考が止まり口が固まった。「牡蠣(oyster)」と「人事政策」との関係を、その瞬間、必死で探ったが、理解できるわけもなく、結局そこは素っ飛ばして後半部分だけを訳した。
同僚に交代してブースから出てからも「カキ」のことが頭から離れず電子辞書でいろいろと探し回った。ありました! 出典はシェークスピア。「ウィンザーの陽気な女房たち」(The Merry Wives of Windsor)に出てくるらしい。oysterはあの食用の「カキ」ではなく真珠がとれるアコヤガイのこと。「世界はあなたのアコヤガイ」とは、「世界はあなたの思い通りになる」という意味らしい。これで、その役員が言った後半の「30歳代であれば、チャンスはいっぱいある」とつながった。くだんの日本人に、その役員は精一杯の励ましの言葉を贈ったのに、通訳者が台無しにしてしまった。
イギリス人とシェークスピアは要注意。
by homaranisto
| 2008-01-18 16:25
| 英語・通訳